Real? Motherhood
使用機材:
DVDプレイヤー
ビデオ・プロジェクター 
ピン・ライト 音声はなし

それは、一見するととても美しい作品だ。壁面に映しだされた母と乳児のスナップショット。

若い母親は作家自身で、手持ちの古いカラー写真を使ったものという。写真は約10秒ごとに切り替わる。赤ん坊を抱きあげる母。お乳を飲む子。じっと見つめあう母子。幼な児の笑み。
 
そうした幸福なシーンの合間に、モノクロで挿入される母親の、ふっと<私>に返ってたじろぐような表情。

壁の前に、ガラス製のベビーベッドが置かれている。天井から射すスポットライトを受けてきらきらと水晶のように輝き、暗い部屋のなかで、まるでそこだけ神聖な祭壇のようだ。

このガラスのベッドには、けれども、側面にくっきりと十字架が刻まれていて、紛れもなく西洋の棺のイメージに重ねられていることがわかる。ベビーベッドという母性の祭壇は、同時に、女性の個我を葬る死の床でもあったのだ。その甘美な死は、えてして女を魅了する。さらに個々の写真には、バダンテールの文章が上書きされている。

「(母性の神話を)人は私たちに/ 信じこませようとしているが、/ 実は社会が女性に与えたものなのだ」。

美しい作品にこめられた峻厳なメッセージ。出光真子はこんなふうに女性の日常の、ありふれた幸せと背中あわせの息苦しさや閉塞感をよくテーマにしている・・・

                香川 檀
 
「出光真子と<越境する女たち21>」より抜粋
 月刊『eとらんす』2001年4月号

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